2023年03月17日
医師のための不動産投資術:メリットと節税のしくみ、注意点を解説
人の命や健康状態に大きく関わることもあり、医師は高収入の方が多い職業です。
とはいえ「拘束時間が長く、ゆっくり休む時間がない…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そして、高収入であるがゆえに税金の負担が重く「収入の割に手取りが少ない」と感じることもあると思います。
「忙しい。でも効率良く手取りを増やしたい」という方には、不動産投資が向いているかもしれません。
ここでは、不動産投資と医師の相性が良い理由や節税の仕組み、高属性の方の失敗事例を解説します。
目次
不動産投資と医師の相性が良い理由
医師による不動産投資は、税制面やローン審査で有利です。
また、忙しい方でも続けやすく、長期目線で資産を形成したい方にも向いています。
節税効果が高い
日本の所得税は、所得が高い方ほど税金の負担が増える仕組みです。
不動産投資による節税は、不動産所得で赤字を作り、本業の所得を圧縮する(下げる)手法です。
この方法では、所得が高い方ほど節税効果を得られます。
長期投資に向いている
医師は高収入である一方、ワークライフ・バランスが取りにくい職業です。
将来に不安のある方は、万が一や老後に備えて副収入の仕組み作りを検討してみてはいかがでしょうか。
投資で得られる収入には、インカムゲインとキャピタルゲインがあります。
インカムゲイン
資産保有中に得られるお金(家賃収入、株式の配当など)
キャピタルゲイン
売却益
不動産投資では両方を狙えることもありますが、主流はインカムゲインを狙う手法です。
家賃収入には、
・入居者が決まれば長く安定して得られる
・短期間で大きく変動しない
という特徴があります。
また、不動産の価値は築年数によって変動するため、株価よりも短期で大きく変動する可能性が低いといえます。
このような理由から、不動産は長期目線での投資先として人気です。
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ローン審査で有利
不動産は、ローンを組んで購入するケースがほとんどです。
物件が高額なこともありますが、ローンを組んだほうが投資効率をアップできるためです。
この効果をレバレッジ効果と呼びます。
ローン審査では、物件の収益性・担保価値・本人の属性が考慮されます。高収入の方は属性が高く、融資審査に通りやすい傾向です。
また、自己資金が多い方は好条件で融資を受けられる可能性もあるため、返済の負担を抑えられます。
管理・税務を外部へ委託できる
不動産投資を続けるには、入居者の募集や物件管理、帳簿付けなどの対応が必要です。
ただし、物件や入居者の管理は管理会社へ、帳簿付けは税理士へ依頼できます。
厚生労働省の「勤務医に対するアンケート調査」によると、一日の活動時間のうち仕事に費やす時間の割合について以下の結果でした。
・「7割以上を仕事に費やしている」と回答した医師は約80%
・上記の中で「9割以上を仕事に費やしている」と回答した医師は約20%
例:24時間のうち睡眠時間×6時間、活動時間×18時間の場合
→労働時間は約12~16時間以上(18時間×70%または90%)
勤務医として働く方の中には、夜勤が多く24時間以上の休息を取りにくい方も多いのではないでしょうか。
不動産投資は、そんな忙しい方とも相性が抜群です。
参考元:厚生労働省「勤務医に対するアンケート調査結果について」を加工して作成
医師が不動産投資で節税できる仕組み
不動産投資で節税できる仕組みについて、詳しく解説します。
ポイントは「減価償却」と「損益通算」
不動産投資で節税できる理由は、減価償却によって不動産所得の赤字を作り、本業の所得と損益通算できるためです。
【減価償却とは?】
減価償却とは、建物の購入価格を一定の年数に分割して経費計上することです。
帳簿上、このときに使用する勘定科目を「減価償却費」と呼びます。一般的に、建物は単年ではなく長期の使用を前提として購入するため、減価償却で少しずつ経費計上する仕組みです。
【損益通算とは?】
黒字の所得から赤字の所得を差し引くことを「損益通算」といいます。
所得といっても複数の種類があり、全てにおいて損益通算が認められているわけではありません。
しかし、給与所得や事業所得と不動産所得は、損益通算が認められています。
減価償却費は実際にお金が出ていく費用ではありませんが、物件によっては金額が大きくなります。
1年間に計上できる金額が大きければ、赤字を作ることが可能です。
減価償却を用いて不動産所得の赤字を作り、本業の所得と損益通算すれば所得税・住民税の節税につながります。
具体的な節税効果については後ほどシミュレーションで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
青色申告や法人化も選択肢の一つ
将来的に事業の拡大を検討している場合、青色申告や法人化を上手に活用するとさらに大きな節税効果を期待できます。
確定申告には白色申告と青色申告がありますが、条件を満たせば青色申告の各種特典を利用することが可能です。
ちなみに、個人と法人では税率の仕組みが異なります。
個人が納める所得税は超過累進税率、法人が納める法人税は比例税率です。
超過累進税率:所得が高いほど税率が上がる(5%から45%)
比例税率:税率が一定(普通法人:23.2%※)
※資本金1億円以下など、法人区分によっては15%の税率が適用されます
高所得の方が法人化した場合、所得税率と法人税率の差が大きくなるため節税効果を期待できます。
法人化すると経費にできる幅が広がるなど、税制面で有利です。
青色申告や法人化を選択すると帳簿や手続きの手間が増えますが、税理士報酬・管理費は経費として認められます。
忙しい方は、外部委託を検討するとよいでしょう。
節税シミュレーション【年収2000万円の医師が不動産投資を始めた場合】
年収2000万円の医師が以下の条件で不動産投資を始めた場合と、本来の納税額を比較しました。
ここでのシミュレーションによる節税効果は、約172万円です。
【条件】
<本人>
給与収入:2000万円
※給与所得控除以外の各種控除(基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除など)は考慮していません
<物件>
木造アパート
購入価格:1億円
利回り:7.5%
家賃収入:年間750万円
必要経費:150万円(減価償却費を含まない金額)
減価償却期間:10年
※空室、ローン返済なし
それぞれの計算方法は、以下の通りです。
【税金対策あり】
STEP1:各所得を計算する
給与所得1805万円=給与収入2000万円−給与所得控除195万円
不動産所得△400万円=家賃収入750万円-必要経費150万円-減価償却費1000万円
STEP2:損益通算する
課税所得1405万円=給与所得1805万円+不動産所得△400万円
STEP3:税額を計算する
A所得税310万500円=1405万円× 33%-153万6000円
B住民税140万5000円=1405万円×10%
税額450万5500円(A+B)
【税金対策なし】
各種控除を考慮しないため、給与所得=課税所得にて計算します。
A所得税442万4000円=課税所得1805万円×40%-279万6000円
B住民税180万5000円=1805万円×10%
税額622万9000円(A+B)
減価償却による節税の注意点
減価償却費で節税できる期間は、限られている点にご注意ください。
償却期間は、物件の構造(木造、鉄筋コンクリート造など)や築年数によって異なります。
シミュレーションのような中古アパート(木造)は、減価償却費を1年間で大きく取れますが、その分、償却できる期間が短縮されます。
また、不動産を保有している間にかかる所得税・住民税の他、売却時に税金がかかる点も考慮しなければなりません。
購入する物件や売却のタイミングは、それらを踏まえて検討しましょう。
高属性の医師は要注意!ワンルームマンションでの失敗事例
属性の高い医師は金融機関から融資を引きやすく、不動産投資と相性の良い職業です。その分、失敗する方もたくさんいます。
具体的には、利益の出ない新築ワンルームマンションを購入し、多額の負債を抱えてしまうケースです。
・セミナーや初回の相談で物件を紹介する
・メリットのみをアピールする
など相談先によっては投資家目線ではなく、不動産会社の利益を重視して提案するケースがあります。
収益性の低い物件を購入してしまうと、2棟目、3棟目の購入が難しくなってしまうため、相談先には十分にご注意ください。
大吉不動産では、初回の相談で物件をおすすめしません。
どのような物件が適しているかは、お一人ずつの状況や目標によって異なるためです。
ゆっくりとお話を伺ってからご紹介しますので、初めてで不安な方もお気軽にご相談ください。