2021年10月25日
不動産投資にかかる税金【購入&保有&売却】段階毎にまとめて解説!
不動産投資にかかる税金は、物件購入時・保有時・売却時に分かれます。
それぞれのタイミングでかかる税金の種類が変わるので、どのような税金がかかるのか確認しておきましょう。
目次
不動産投資にはどんな税金がかかる?
不動産投資の購入時、保有時、売却時にかかる税金の種類は以下の通りです。
購入時
- 印紙税
- 登録免許税
- 不動産取得税
保有時
- 固定資産税・都市計画税
- 所得税・住民税
- 個人事業税
- 消費税
売却時
- 譲渡所得税(所得税・住民税)
- 印紙税
- 登録免許税
各税金の概要と計算方法について、次の章から解説します。
不動産投資をはじめる時にかかる税金3種類
不動産投資をはじめる時にかかる税金は、以下3種類です。
印紙税 | 土地や建物の売買契約書、ローン契約書に貼る収入印紙代 |
登録免許税 | 所有権保存・移転登記、抵当権設定登記にかかる税金 |
不動産取得税 | 土地や建物を取得した人に課税される地方税 |
以下の記事では、仲介手数料や頭金など税金以外の不動産投資の初期費用について詳しく解説しているので、投資用の不動産を購入予定の人はこちらもご覧ください。
印紙税
印紙税とは、土地や建物の売買契約書や、金融機関からローンを借り入れる際の金銭消費貸借契約書に貼る収入印紙代です。
印紙税は、収入印紙を契約書に貼付して消印を押すことで納税する仕組みです。
不動産の売買契約書や金銭消費貸借契約書にかかる印紙税の税額は、契約書に記載された金額によって以下の通り異なります。
印紙税の税額(不動産売買契約書、金銭消費貸借契約書)
本則 | 軽減措置※ | |
1,000万円超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
※令和4年3月31日までは、土地・建物の不動産売買契約書など「不動産の譲渡に関する契約書」にかかる印紙税に軽減措置が取られています。参考元:国税庁 契約書や領収書と印紙税
例:令和3年12月1日にローンを3,000万円借り入れて6,000万円のアパートを購入する際にかかる印紙税額は、5万円です。(内訳:不動産売買契約書3万円、金銭消費貸借契約書2万円)
登録免許税
登録免許税は、土地や建物の登記をする際にかかる税金です。
不動産の売買は一般的な商品と違って、購入と同時に売主から買主へ権利を譲渡する手続きが重要になります。
買主が登記の手続きを正しく行うことで、第三者に自分が所有者であることを主張できるようになります。
一般的に不動産投資をはじめる際に必要な登記は、以下3種類です。
所有権保存登記 | 新築建物を購入する際の登記 |
所有権移転登記 | 土地や中古の建物を購入する際の登記 |
抵当権設定登記 | 不動産を担保にローンを借り入れる際の登記 |
登録免許税の計算方法は、以下の通りです。
登録免許税(所有権)=不動産評価額※×税率
登録免許税(抵当権)=借入金額×税率
※不動産評価額:市町村が作成した固定資産税課税台帳の価格。売買価格とは異なります。
登録免許税の税率
土地の所有権移転登記 | 2%(1.5%)※ | |
建物 | 所有権保存登記(新築) | 0.4% |
所有権移転登記(中古) | 2% | |
抵当権設定登記 | 0.4% |
※令和5年3月31日までは()内の軽減税率が適用されます。
参考元:財務省 登録免許税の概要
例:令和3年12月1日に評価額6,000万円の中古アパートを購入する際にかかる登録免許税は、120万円です。
※土地の評価額4,000万円、建物の評価額2,000万円、ローン借入額5,000万円と仮定します。
土地の登録免許税 60万円=4,000万円×税率1.5%
建物の登録免許税 40万円=2,000万円×税率2%
抵当権設定の登録免許税 20万円=5,000万円×税率0.4%
不動産取得税
土地や建物などの不動産を取得した人には、不動産取得税が課税されます。不動産取得税は、国ではなく都道府県に納税する地方税です。
不動産購入時ではなく、購入後数ヶ月経ってから送付される納税通知によって納税する仕組みなので、忘れずに資金を準備しておきましょう。
不動産取得税の計算方法は、以下の通りです。
不動産取得税=固定資産税評価額※×税率
※固定資産税評価額:市町村が作成した固定資産税課税台帳の価格。売買価格とは異なります。
不動産取得税の税率
本則 | 軽減税率※ | |
土地・住宅 |
4% |
3% |
非住宅 |
※土地や住宅の不動産取得税は、令和6年3月31日まで軽減税率が適用されます。
参考元:東京都主税局 不動産取得税
例:6,000万円のアパートを購入した場合の不動産取得税は、180万円です。
※土地の評価額4,000万円、建物の評価額2,000万円と仮定します。
土地の不動産取得税 120万円=4,000万円×税率3%
建物の不動産取得税 60万円=2,000万円×税率3%
また、不動産取得税には令和6年3月31日まで軽減措置が適用されています。軽減措置の具体的な計算方法に関しては以下の記事で解説しているので、興味がある人はご覧ください。
不動産を保有している時にかかる税金4種類
不動産を保有している時にかかる税金は、以下4種類です。
固定資産税・都市計画税 | 不動産を所有している人にかかる税金 |
所得税・住民税 | 不動産所得に対してかかる税金 |
個人事業税 | 課税金額が290万円を超えると課税される地方税 |
消費税 | 課税売上高が1,000万円以上の事業者が課税対象 |
個人事業税・消費税は、一定条件以上の所得を得た場合のみ課税されます。
不動産を保有している時にかかる税金やその他の必要経費については、以下の記事でさらに詳しく解説しているので、賃貸経営を始める予定の人は併せてご覧ください。
固定資産税・都市計画税
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や建物などの不動産を所有している人にかかる税金です。
納税先は、東京都の場合は「都」、その他の地域は「市町村」になります。
固定資産税の納税義務者は1月1日時点での所有者になるため、年度の途中で不動産を売却した場合でも売却した年の納税義務者は売主になります。
不動産売買取引では、売主の負担を減らすために、引き渡し日を基準に買主と固定資産税を精算するケースが一般的です。
都市計画税は、市街化区域内に所在する土地や建物に対して、固定資産税と一緒に課税されます。道路、公園、水道などの都市計画施設の整備や、土地区画整理事業のための費用に充てられる税金です。
固定資産税・都市計画税の計算方法は以下の通りで、土地・建物それぞれに課税されます。
固定資産税=課税標準額※×標準税率1.4%
都市計画税=課税標準額※×標準額×0.3%
※課税標準額:市町村が決定した固定資産課税台帳に登録された価格です。
また、固定資産税の住宅用地や新築住宅には特例措置が設けられています。詳細は各自治体の公式サイトをご確認ください。
所得税・住民税
不動産所得(家賃収入ー必要経費)には、所得税・住民税がかかります。
所得税は、他の所得と合算して計算する総合課税※となっており、課税所得が多くなるほど税率が高くなる仕組みです。
※総合課税とは?:例えば、会社員の給与所得が年間500万円、不動産所得が年間300万円だった場合、給与所得と不動産所得を合算して税額を計算する方法です。
所得税の計算方法は、以下の通りになります。
課税所得=不動産所得+その他の所得ー各種控除※
所得税=課税所得×税率ー課税控除額※
※各種控除は、扶養控除、生命保険料控除など個人によって異なります。課税控除額は、以下の表をご覧ください。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~194.9万円 | 5% | 0円 |
195万円~329.9万円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694.9万円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899.9万円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799.9万円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999.9万円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
例:課税所得金額500万円の場合、所得税は57万2,500円です。
500万円×税率20%ー控除額42万7,500円=57万2,500円
住民税は、各地域の公共施設、上下水道、ごみ処理などの行政サービスに必要な費用を分担するために課税される地方税です。原則、所得に対して一律10%となっています。
個人事業税
個人事業税は、賃貸経営が事業とみなされる場合に課税される税金です。家賃収入が290万円を超えると納税義務が生じる税金で、納税先は都道府県です。
個人事業税の計算方法
個人事業税=(不動産所得ー事業主控除290万円)×税率5%
消費税
店舗や事務所などの事業用不動産を賃貸する場合、賃料は消費税の課税対象になります。
ただし、賃貸経営者に納税義務が生じるのは、前前年の課税売上高が1,000万円以上の場合です。
課税売上高が1,000万円未満の場合は、免税事業者となり消費税の納税が免除されます。
家賃収入にかかる消費税については以下の記事で解説しています。令和5年から始まる「インボイス制度」についても解説しているので、興味がある人はご覧ください。
不動産を売却する時にかかる税金3種類
不動産を売却する時にかかる税金は、以下3種類です。
譲渡所得税 | 不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対してかかる税金 |
登録免許税 | ローン完済時の抵当権抹消登記にかかる税金 |
印紙税 | 不動産売買契約書や領収書にかかる収入印紙代 |
譲渡所得税(所得税・住民税)
不動産を売却して得た利益を譲渡所得と言い、譲渡所得に対してかかる税金を譲渡所得税と言います。譲渡所得税の内訳は、所得税・住民税です。
譲渡所得税の計算方法は、以下の通りです。
課税譲渡所得=売買価格ー(取得費※+譲渡費用※)
譲渡所得税=課税譲渡所得×税率
※取得費:不動産の購入代金、仲介手数料など、不動産を購入するためにかかった費用。
譲渡費用:仲介手数料や測量費など、不動産を売るためにかかった費用。
譲渡所得税の税率は、不動産を所有している期間によって大きく異なるため、売却するタイミングに注意が必要です。
譲渡所得税の税率
所有期間※ | 所得税 | 住民税 |
5年以下 | 30% | 9% |
5年超え | 15% | 5% |
※所有期間は、不動産を売却した年の1月1日が基準となります。
例:課税譲渡所得が3,000万円の場合、譲渡所得税は所有期間が5年以下で1,170万円、5年超えで600万円です。
所有期間5年以下:譲渡所得税1,170万円
所得税900万円=3,000万円×税率30%
住民税270万円=3,000万円×税率9%
所有期間5年超え:譲渡所得税600万円
所得税450万円=3,000万円×税率15%
住民税150万円=3,000万円×税率5%
印紙税
不動産を売却する際の印紙税の税額や仕組みは購入時と同じなので、「不動産投資をはじめる時にかかる税金3種類」をご覧ください。
ただし、売却時は買主から代金を受け取った証として発行する領収書にも印紙税がかかります。
領収書にかかる印紙税は、マイホームやセカンドハウスなど、営利目的でない不動産を売却した場合は非課税ですが、投資用の不動産を売却した場合は課税対象です。
領収書の印紙税額
記載された受取金額 | 印紙税額 |
1,000万円超え2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円超え3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超え1億円以下 | 2万円 |
参考元:国税庁 契約書や領収書と印紙税
登録免許税
不動産を売却する際、抵当権抹消登記に登録免許税がかかります。
抵当権抹消登記は、不動産を担保にローンを借り入れて、残債がある状態で売却するケースに必要な登記です。
抵当権とは、契約者が万が一滞納した場合、金融機関が不動産を競売にかけるために設定する権利です。
不動産を売却する際は、ローンを完済して抵当権を外した上で買主に引き渡すため、抵当権抹消登記をする必要があります。
抵当権抹消登記の登録免許税:不動産1個につき1,000円
所得を得たら確定申告を忘れずに(まとめ)
今回は、不動産投資にかかる税金について解説しましたが、賃貸経営で家賃収入を得た時や、不動産を売却して譲渡所得を得た時は確定申告が必要です。
確定申告は、毎年2月16日から3月15日と期間が決まっているので、忘れずに申告しましょう。以下の記事では、家賃収入にかかる確定申告について解説しているので、興味がある人はご覧ください。
また、不動産投資では、減価償却費やその他経費を計上することで節税できます。不動産投資の節税に関しては以下の記事で解説しているので、こちらもご覧ください。