2022年07月13日
アパート経営に必要な初期費用とは?土地あり・なしケース別に解説
アパート経営を始める際、初期費用がどれくらいかかるのか事前に確認しておくことは大切です。
アパート経営では、土地を所有している場合と所有していない場合で、かかる費用や手間が異なります。
また始めるには、アパート建築費や土地の購入費用の他にも諸費用が必要です。
今回は、土地を所有している場合としていない場合、ケース別の初期費用の考え方や、アパート経営に必要な諸費用について解説していきます。
目次
アパート経営に必要な初期費用とは?
アパート経営に必要な初期費用は、土地・建物の購入代金と諸費用の合計です。
土地・建物の購入代金は、アパートローンで資金を準備するケースが一般的ですが、金融機関の条件によっては頭金が必要になります。
また、勘違いされることが多いですが、頭金と諸費用は別物です。
頭金は、土地やアパートの購入価格の一部に充当されるお金。
諸費用は、土地やアパートの本体価格以外にかかる費用になります。
諸費用の目安
諸費用の目安は、物件価格×5~7%です。
例えば、5,000万円のアパートを購入した場合、250万円~350万円が諸費用の目安です。
ただし、諸費用の中でも金額が決まっているものとそうでないものがあるため、上記はあくまでも目安になります。
【土地あり・なしケース別】アパートの初期費用の考え方
アパートを購入する際、土地をすでに持っているケースと土地を持っていないケースでは購入の方法が異なります。
土地をすでに持っている場合、「建物だけ購入すればいい」と思われるケースが多いですが、新築のアパートを建設するには手間・時間・費用がかかるため注意が必要です。
土地を持っていない場合、土地と建物をセットで購入するケースが一般的です。
土地から購入する必要がありますが、中古アパートであれば、新築に比べて費用を大きく抑えられます。
土地を所有しているケース
すでに所有している土地に新築アパートを建てる場合、アパート建築費としてさまざまな費用が必要です。
アパート建築費は、本体工事費と付帯工事費に分かれます。
・本体工事費:基幹部分、内装、外装、水回り設備など、建物に最低限必要な設備の工事費
・付帯工事費:水道引き込み工事、電気工事など、アパートに人が住むために必要な設備工事費
ハウスメーカーや工務店によって工事内容や費用が異なるため、契約内容をしっかり確認しましょう。
また、その他、状況に応じて現況測量費、建築解体費などがかかるケースもあります。
現況測量費は、既存の測量図が古く正確でない場合など、新たに測量を要する際に必要です。建築解体費は、現在の建物を取り壊して再建築する場合に必要です。
アパートは、建築に数ヶ月~1年かかる可能性がありますが、その間も固定資産税・都市計画税がかかります。家賃収入を得られるようになるまでは、他の収入源が必要です。
また、住宅が建っている土地の固定資産税・都市計画税は、例措置で税額が軽減されますが、アパート建設中は特例措置が適用されない可能性があるため注意が必要です。
土地を所有していないケース
土地を所有していない場合、土地と建物の購入代金が必要です。
新築の場合、先述したアパート建築費がかかりますが、中古アパートであればすでに経営できる準備ができているため、費用を大きく抑えられるでしょう。
また、中古アパートは実際に物件が存在しているため、状態を把握しやすいというメリットもあります。
ただし、中古アパートの場合、大きな修繕費がかかるリスクもあります。アパート経営のリスクについては、以下の記事をご覧ください。
アパート経営を始める際に必要な諸費用
アパート経営を始める際、税金や手数料など以下の諸費用がかかります。
不動産取得税 | 土地や建物の取得時にかかる地方税 |
印紙税 | 土地や建物の契約書、ローン契約書にかかる収入印紙代 |
登記費用 | 登記手続きにかかる登録免許税、司法書士報酬など |
ローン事務手数料 | ローンを借り入れる際に金融機関に支払う手数料 |
保証料 | 金融機関が保証会社を利用する際に保証会社に支払う費用 |
仲介手数料 | 不動産会社に仲介を依頼した際に支払う費用 |
損害保険料 | 火災保険料・地震保険料に加入する際の費用 |
不動産取得税
不動産取得税は、土地・建物などの不動産を取得した際に都道府県が課税する地方税です。
納税のタイミングは購入後、半年から1年半後。購入から時間が経ってから納税通知書が届きますが、納税額が高額になるケースがあるため、資金準備を忘れずに行いましょう。
不動産取得税の計算式は、以下の通りです。
税率
本則(軽減税率※) | |
土地・建物 | 4%(3%) |
参考元:東京都主税局 不動産取得税
※土地や住宅の税率は、令和6年3月31日まで軽減税率が適用されます。
例:固定資産税評価額が5,000万円の建物の不動産取得税は、200万円です。
不動産取得税の計算のもとになる固定資産税評価額は、固定資産税台帳に登録されている価額で実際の購入代金とは異なります。
固定資産税評価額は、各市区町村から毎年送られてくる課税通知書で確認できます。
また、不動産取得税には、軽減税率の他にも土地や新築住宅に軽減措置が設けられているので、詳しく知りたい人は以下の記事をご覧ください。
印紙税
印紙税は、不動産の売買契約書、ローン契約書などに貼付する収入印紙代です。税額は、契約書の金額によって異なります。
印紙税額 | ||
契約金額 | 本則 | 軽減措置※ |
1,000万円超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
参考元:国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
※令和4年3月31日までは、土地・建物の売買契約書、建設工事の請負に関する契約書にかかる印紙税に軽減措置が取られています。
登記費用
不動産を取得したときや、不動産を担保にローンを借り入れる場合、登記費用がかかります。登記費用の内訳は、登録免許税と司法書士報酬です。
登録免許税とは、土地の所有権移転登記、建物の所有権保存・移転登記、抵当権設定登記にかかる税金で、納税のタイミングは登記申請時になります。
所有権保存登記 | 新築建物の所有者を登録する際の手続き |
所有権移転登記 | 土地や中古の建物の所有者を変更する際の手続き |
抵当権の設定登記 | ローン滞納時、金融機関が競売にかけられる権利を抵当権と言い、その設定を行うこと |
一般的に、登記手続きは司法書士が代理で手続きを行うため、司法書士への報酬を支払います。司法書士報酬は、目安で10万円~15万円です。
登録免許税の計算方法
登録免許税の計算方法は、以下の通りです。
登録免許税(所有権)=不動産評価額×税率
登録免許税(抵当権)=借入金額×税率
登録免許税の税率
税率 | ||
土地の所有権移転登記 | 2%(1.5%)※ | |
建物 | 所有権保存登記(新築) | 0.4% |
所有権移転登記(中古) | 2% | |
抵当権設定登記 | 0.4% |
参考元:財務省 登録免許税の概要
※令和5年3月31日までは()内の軽減税率が適用されます。
例えば、令和3年7月に3,000万円の土地、2,000万円の中古アパートを購入し、4,000万円のローンを借入れた場合にかかる登録免許税は101万円です。
計算式
土地の所有権移転登記 45万円=3,000万円×1.5%
建物の所有権移転登記 40万円=2,000万円×2%
抵当権設定登記 16万円=4,000万円×0.4%
ローン事務手数料・保証料
金融機関からローンを借り入れる際、事務手数料や保証料がかかります。
事務手数料は、ローンを借り入れる際に金融機関に支払う手数料で、手数料が一定の定額型と借入額に応じて手数料が変わる定率型があります。
保証料は、保証会社を利用する際に保証会社に支払う費用です。
借入金額に一定の割合をかけて一括で支払う場合と、利息に上乗せして支払う場合があります。
ただし、保証料を不要としている金融機関は少なくありません。
・事務手数料の目安
定額型:5万円~、定率型:借入額×1.65%~
・保証料目安
借入額×2%前後(一括で支払う場合)
仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼する場合、仲介手数料が発生しますが、仲介手数料は以下の通り上限が定められています。
仲介手数料=購入価格×3%+6万円+消費税
例えば、5,000万円のアパートを購入した場合の仲介手数料の上限は、156万円です。
仲介手数料156万円=5,000万円×3%+6万円
※仲介手数料には別途消費税がかかります。
仲介手数料は、諸費用の中でも大きな金額となるので資金計画の際に注意が必要です。
火災保険料・地震保険料
アパートローンを借り入れる際、火災保険への加入は融資の条件となっていますが、日本では地震のリスクも高いため、地震保険とセットで加入しておくと安心です。
加入期間は、火災保険が最長10年、地震保険が最長5年となっています。
保険料は建物の構造、保険期間、地域、オプションなどによって異なります。
木造アパートは建物のすべてが対象の保険になり、保険期間5年くらいで30万円~です。
ローンを借り入れる場合は融資額に注意
アパートローンを借り入れる場合、融資額に注意が必要です。
ローンを借り入れる際、頭金なしで借り入れられるケース(フルローン)、物件価格+諸費用で借り入れられるケース(オーバーローン)もあります。ただし、アパートローンは住宅ローンよりも金利が高く、返済の負担が大きくなります。
資金計画の際、維持費も考慮した上で借り入れ過ぎないように注意が必要です。
最新の融資状況や不動産投資ローンについては、以下の記事で詳しく解説しているので興味がある人はご覧ください。
アパート経営に必要な維持費
安定したアパート経営を行うためには、初期費用だけでなく購入後の維持費も考慮しておくことがポイントです。
毎月・毎年かかる維持費
固定費として、毎月・毎年かかかる維持費は以下の通りです。
委託管理費 | 管理を管理会社に任せる際の費用 |
光熱費 | 共用部分の電気代、水道代など |
借入利子 | アパートローンの利息 |
固定資産税・都市計画税 | 土地、建物それぞれに毎年課税 |
損害保険料 | 火災保険料、地震保険料の契約更新の際に必要 |
随時かかる維持費
固定費の他にも、随時かかる維持費があります。
修繕費 | 設備や建物が破損した場合にかかる費用 |
リフォーム費用 | 次の入居者が快適に生活できるための費用 |
仲介手数料 | 入居者を紹介してくれた不動産会社に支払うケースがある |
広告宣伝費 | 入居者募集広告にかかる費用 |
維持費は、初期費用と併せてアパート経営を始める前にチェックしておき、突発的な費用に備えて手元にお金を残しておくと安心です。
まとめ
アパート経営を始め際、土地を所有している場合と所有していない場合では必要な初期費用が変わります。あなたの状況に合わせた資金計画を行いましょう。
また、初期費用と併せて購入後の維持費も考慮しておくと、安定したアパート経営を行える可能性があります。
これからアパート経営を始める予定の人には、以下の記事もおすすめです。