2023年01月26日
健全な賃貸経営のための!空室率の正しい考え方&空室リスク対策とは
安定した賃貸経営をしていくためには、空室リスクを正しく認識することが大切です。
空室リスクの基準の一つに空室率がありますが、空室率の考え方が正しくないと、投資判断に失敗する原因になります。
今回は、空室率の正しい考え方や空室リスクへの備え方について解説します。
目次
空室率の正しい考え方と計算方法
空室率とは、賃貸物件の総戸数に対する、空室戸数が占める割合です。
空室率は、空室が多いほど高くなります。
例えば、以下の条件の賃貸物件が売りに出されている場合、空室率50%という考え方があります。
条件
・総戸数8戸のアパート
・現在の空室数:4戸
計算方法
空室率50%=4戸÷8戸×100
しかし、上記の空室率はあくまでも現時点での短期的なものなので、長期的な不動産投資をする際この数字だけを参考にすることは正しい考え方ではありません。
短期的な空室率のみで考えた場合、同じ物件でも1ヶ月違うだけで空室率が40%近く変わってしまうケースもあります。
総戸数8戸のアパートの空室率
空室 | 空室率 |
4戸 | 50% |
2戸 | 25% |
1戸 | 12.5% |
例えば、2月に空室数が4戸でも、3月の繁忙期で3人の新規入居者が入居している可能性もあるでしょう。
この場合、3月の空室数は1戸のみなので、空室率12.5%です。
わずか1ヶ月で空室率が40%近く変わってしまいます。
それでは、空室率はどのように計算すれば良いのでしょうか。
総戸数8戸のアパートを例に、空室率の正しい考え方と計算方法を解説していきましょう。
空室率の計算方法は3種類
空室率の計算方法は、3種類あります。
「総戸数8戸のアパート・空室数3戸」を共通条件とした場合、それぞれの空室率は以下の通りでした。
① 特定の時点での空室率:37.5%
② 年間の総戸数に対する空室率:約9.3%
③ 年間の総賃料に対する空室率:約10%
共通の条件 | 総戸数8戸のアパート・空室数3戸 |
②の条件 | 空室期間:3ヶ月 |
③の条件 | 空室期間:3ヶ月 賃料:4戸×8万円、4戸×6万円 ※空室は賃料8万円の部屋×3戸とします。 |
それぞれの計算方法は以下の通りです。
計算方法
① 空室率=空室数÷総戸数×100
37.5%=3戸÷8戸×100
② 空室率=(空室数×空室期間)÷(総戸数×12ヶ月)
約9.3%=(3戸×3ヶ月)÷(8戸×12ヶ月)×100
③ 空室率=(空室数×空室期間×空室の賃料)÷年間の総賃料収入
約10%=(3戸×3ヶ月×8万円)÷672万円
年間総賃料672万円={(4戸×8万円)+(4戸×6万円)}×12ヶ月
先述の通り、①の計算方法は特定の時点での空室のため、この数字だけで投資判断をすることは正しくありません。
不動産投資は長期的な運用になるため、空室率は年単位で考える必要があります。
③の計算方法は少し複雑になりますが、長期的な不動産投資をする場合、賃料や空室期間を考慮すると、現実的な数値になります。
空室率の目安20%は正しい?空室率の目安の考え方
国土交通省の調査では、全国の賃貸戸数に対する空室率は2018年で18.5%でした。(参考元:国土交通省 持ち家・借や別の空き家率の推移)このような全国的な数字から、空室率20%を基準にしている投資家も少なくありません。
しかし、空室リスクは地域や物件によって異なるので、全国一律で20%と考えることは正しい投資判断とは言えないでしょう。
それでは、空室率の目安はどのように考えればいいのか、解説していきます。
空室率の目安の考え方
空室率の目安を考える際は、地域や物件に合わせて検討することが大切です。
総戸数8戸のアパートの空室率が20%である状況を考えた場合、年間を通して19戸が空室だったという状況です。
例えば、
・2戸が約10ヶ月空室
・3戸が約半年空室
・5戸が約4ヶ月空室
といった状況です。
年間の空室戸数の計算方法
総戸数8戸×12ヶ月=年間貸出戸数96戸
96戸×空室率20%=年間の空室戸数19戸
たしかに、地域によっては、空室率20%のリスクを考慮する必要がある物件もあります。
しかし、空室率の目安は物件ごとに異なるため、一概にどの物件にも当てはまるというわけではありません。
例えば、
・都内で駅から5分以内の築浅のマンション
・地方の交通の便が悪い築古アパート
では空室リスクが大きく異なります。
前者の場合、空室率20%はリスクを過剰に見積もり過ぎている可能性がありますし、後者は20%以上の空室率を見積もる必要がある可能性があるでしょう。
このように空室率の目安は、物件や地域の特性によって異なるので、管理会社や不動産会社など、地域に詳しい不動産の専門家に相談しながら見極めることが大切です。
空室率の上昇が不安…不動産投資を始めても大丈夫?
これから不動産投資をはじめたいと考えていても、「空室率が上昇している」「空き家の増加が社会問題化している」というニュースを聞くと、不安になりますよね。
空室率が上昇する原因は、以下が考えられます。
・少子高齢化による人口減少
・供給過多
・所有者が空室対策をしていない
少子高齢化が進み人口が減少している地域は、賃貸需要が減り、空室リスクが高くなる可能性があります。
人口の増減がなくても、新規でアパートやマンションが建てられることによって空室率が上がってしまうケースもあるでしょう。
この場合、将来的に都市開発の計画がある可能性もあるため、地域の情報収集をしてみるのも手段の一つです。
また、不動産の所有者の中には、相続した不動産をそのままにしている人もいます。
そのような人が空室対策をしなければ、空き家の状態が改善されず、空室率上昇の原因の一つになります。
空室リスクの現状
それでは、空室リスクの現状はどうなっているのでしょうか。結論から言うと、空室対策をしっかり行えば、過剰に空室リスクを気にする必要はありません。
総務省の調査では、2018年の空き家率は13.6%で過去最高というデータがあります。(参考元:総務省 平成30年住宅・土地統計調査p2,3)
しかし、この数字は賃貸住宅だけでなく、別荘などの二次的住宅や売却用の住宅などの総数を考慮した数字です。賃貸住宅のみで見た場合、空き家は増加しているものの、増加率自体は減っています。
空き家の増加率 | |
2003年~2008年 | 12.3% |
2008年~2013年 | 4% |
2013年~2018年 | 0.8% |
(参考元:総務省 平成30年住宅・土地統計調査p3)
このようなデータから、空室リスクへの対策をしっかり行えば、空室リスクを過剰に恐れる必要はないでしょう。
空室リスクに備えるためには?
空室リスクに備えるためには、以下3つを意識することが大切です。
・賃貸需要のある地域を選ぶ
・入居者目線の賃貸経営をする
・管理会社選びをしっかりする
人口が減少しているなど賃貸需要のない地域の物件を購入すると、空室リスクが高くなるため、需要のある地域を見極めることがポイントになります。
また、入居者の満足度が高いと入居率の定着につながります。設備投資や迅速な修繕対応を行う、管理の行き届いた共用スペースを心がけるなど、入居者目線の賃貸経営をしましょう。
管理会社に運営を任せる場合、管理会社の質は入居者の満足度に影響します。健全な賃貸経営をしていくためには、管理会社選びも大切です。
投資物件別のその他の賃貸経営リスクについては、以下の記事をご覧ください。
効果的な空室対策のポイント
物件購入時に空室リスクの低い物件選びをしても、老朽化や周辺環境の変化などで空室に悩むこともあるでしょう。
効果的な空室対策をするためには、以下3つがポイントです。
・物件の周辺を調査して、ニーズを見直す
・共用スペースや内装を確認して、管理状況を改善させる
・不動産会社とコミュニケーションを取り、情報収集をする
効果的な空室対策のためには、原因を突き止めることが大切です。賃貸経営が上手くいかない時は、一度、どこに原因があるのか考えてみてくださいね。
具体的な空室対策は、以下の記事で詳しく紹介しているので、興味がある人はご覧ください。
空室率を正しく把握するためには、年間の空室期間や賃料を考慮することがポイントです。特定の時点だけの空室率を参考にする場合、同じ物件でも時期によって大きく異なる可能性があるため注意が必要です。
また、空室リスクは物件や地域によって異なるため、一律で何%と決めずに地域に詳しい不動産会社に相談しながら目安を見極めましょう。
不動産投資の始め方について興味がある人は、以下の記事も読んでみてくださいね。