2022年08月14日
レント ロールとは?物件を見極めるためのチェックポイントと注意点
レントロールとは、賃料や入居者の有無など各部屋の契約状況を一覧にまとめたものです。
記載内容をなんとなく理解するだけでなく、「なぜ?」という視点を持ってレントロールを確認すると、物件の隠れたリスクを推測できます。
今回は、レントロールを確認する際のチェックポイントや、リスクの高い物件を見極めるための注意点などについて解説します。
さまざまな情報を得られるレントロールを正しく理解して、不動産投資の失敗を防ぎましょう。
目次
レントロールとは?どんなことが書かれているの?
レントロールとは、各部屋の賃貸条件や契約状況を一覧にまとめたもので、「家賃明細表」とも呼ばれています。
収益物件を購入する際、長期的に収益を得られるか、リスクが高い物件ではないかなどを物件の資料や現地調査で確認します。
レントロールは、アパートやマンションの一棟買いにおいて、物件を買うべきかどうか判断する際に重要な資料の一つです。
この記事は、一棟物件の購入を検討している人向けです。ワンルームマンションの不動産投資を検討している人には、以下の記事をおすすめします。
レントロールの内容と具体例
レントロールには決まった書式や項目がないため、各物件によって内容が異なります。一般的に記載されることが多い項目と記載例を以下の表にまとめました。
中古のアパートやマンションでは、各部屋によって賃料、間取り、入居状況など条件が異なるケースが珍しくありません。
各部屋で異なる状況をレントロールで確認し、物件全体で収益性があるかを判断します。
以下の表はレントロールの具体例です。文章だけではイメージが湧かないという人は、参考にしてくださいね。
レントロールの具体例
一棟の総戸数が4部屋で、それぞれの賃料・共益費は月6万円上記のレントロールから、以下の内容がわかります。
- 現在の空室は1部屋のみ
- 満室時は年間288万円(月24万円)の賃料収入を期待できる
このように基本的な賃貸条件を確認しただけでは、物件にリスクがあるかどうかの判断が難しいでしょう。
正しい投資判断をして失敗を防ぐためには、レントロールの各項目を正しく理解することが大切です。
レントロールのチェックポイント7つ
レントロールを確認する際、どのような点に気をつければいいのか、チェックポイントを解説します。
物件全体の部屋数
レントロールの号室は基本的に部屋番号の順に並んでいますが、物件によっては「4」など特定の数字が抜けているケースがあります。
例えば、103号室の隣が105号室といったケースです。
マンションなど部屋数が多い物件では、各階の最後の数字と階数だけで計算すると部屋数が合わない場合があるため、注意が必要です。
各部屋の専有面積
各部屋の専有面積を確認する際は、物件を探す人の視点を意識してみましょう。
近年、賃貸物件を探す人はポータルサイトを利用するケースがほとんどですが、その際に面積で物件を絞る場合があります。
例えば、専有面積が24㎡と26㎡の2つの物件があるとします。
24㎡の物件は、25㎡以上で検索すると検討対象から外れてしまうため、集客の機会を逃すことになるでしょう。
また、面積とは専有面積を記載するケースが一般的です。
しかし、店舗や事務所など、1フロアまとめて契約している場合、廊下やトイレの面積も含まれている可能性があるため、売主に正確な情報を確認してみましょう。
各部屋の間取り
各部屋の間取りを確認する際、物件の間取りと周辺のニーズが合っているか意識することが大切です。
例えば、1Rや1Kなど単身者向けの間取りの物件があるとします。
近所に大学や専門学校がある場合、単身者向けの間取りのニーズがあると考えられるでしょう。
一方で近所に小中学校がありファミリー世帯が多く住んでいる地域の場合、単身向けの間取りのニーズがなく、空室が長引く恐れがあります。
不動産会社にヒアリングする、自分で周辺を歩いてみるなど、周辺地域のニーズを確認しておきましょう。
各部屋の賃料・共益費
各部屋の賃料・共益費からは、現入居者がいくらの賃料を支払っているのか確認できます。
同じ間取りで賃料にバラつきがある場合、売主や不動産会社に理由を確認してみることも大切です。
空室の賃料が記載されている場合、賃貸することを想定した目安となっています。
利回りを高く見せるため、高めの賃料を設定している物件もあるため、注意が必要です。
また、賃料が安くても共益費が高くなっているケースがあるため、賃料と共益費を合算した金額が周辺相場に対して妥当か確認しましょう。
敷金・保証金
敷金・保証金はどちらも入居者から預かるお金ですが、地域によって意味合いが異なります。
敷金とは、滞納時の補填や退去時の原状回復費に充てるお金です。
修繕費用などを差し引いた残金は、退去時に返金します。敷金の相場は賃料1~2ヶ月分です。
保証金は、関西・中国・九州地方などで使用されます。
意味合いは敷金と似ていますが、お礼の意味も込められているため、敷金よりも高めに設定されています。保証金の相場は賃料3~6ヶ月分です。
物件によっては、敷金0円など初期費用を安くすることで入居付けをしているケースがあります。現在空室が埋まっていても、入居者が集まりにくい物件の可能性があるため注意が必要です。
また、オーナーチェンジ物件では敷金や保証金の返還義務を引き継ぎます。
それらのお金は売買契約代金に含まれているかどうか、売主に確認しておきましょう。
オーナーチェンジ物件については、以下の記事で詳しく解説しているので興味がある人はご覧ください。
空室状況
空室がある場合、空室期間がどれくらい続いているのか確認してみましょう。
空室が長引いている場合、周辺の生活施設や競合物件を確認し、賃貸需要があるかどうかも確認しておくことが大切です。
特に空室率が多い場合は、購入後に入居者が集まらず赤字経営となってしまう恐れがあるため、慎重に判断する必要があります。
以下の記事では空室率の考え方について詳しく解説しているので、興味がある人はご覧ください。
空室を考慮した利回り
レントロールに記載されている空室状況と各部屋の賃料から、空室を考慮した利回りを計算できます。
利回りには表面利回りと実質利回りがありますが、広告に表示されるのは一般的に表面利回りです。
特に、満室時を想定した利回りが記載されているケースが多くなっています。
空室を考慮した利回りが広告に記載されていない場合、レントロールの空室状況から計算してみましょう。
例えば、以下の条件で1部屋空室の物件があった場合、満室時の表面利回りは7.2%、空室を考慮した表面利回りは5.4%です。
条件
物件価格:4,000万円
満室時の年間賃料:288万円(1部屋の賃料6万円×4部屋)
空室:1部屋×12ヶ月
計算方法
表面利回り=年間賃料収入÷物件価格×100
満室時の表面利回り7.2%=288万円÷4,000万円×100
1部屋空室時の表面利回り5.4%=(6万円×3部屋×12ヶ月)÷4,000万円×100
利回りは、賃料収入が高いほど高くなります。
空室リスクを考慮した上で計算すると、より現実的な数字になるため、物件を購入するべきかの判断に役立つでしょう。
また、広告に掲載されている利回りが高くても、実際に満室運営できなければ赤字になる可能性があります。
利回りが高い=良い物件とは限らない点に注意が必要です。
利回りの考え方や詳しい計算方法については、以下の記事をご覧ください。
こんな物件には要注意【レントロールから見る隠れたリスク】
ここからは、レントロールから隠れたリスクを見極めるための注意点を解説します。
以下のレントロールを見た時、この物件は収益性の高い物件だと思いますか?
上記の物件は満室に近く、収益性の高い物件だと感じる人もいるでしょう。しかし、こちらの物件には以下の点に注意する必要があります。
注意点① 複数の法人契約がある
複数の法人契約がある場合、会社名まで確認しましょう。同じ法人が一括で契約している場合、一斉退去で賃料収入が大幅に下がるリスクがあります。
注意点② 同じ間取りで賃料が異なる
同じ間取りで賃料が異なる場合、賃料が変動するリスクがあります。
特に新しい入居者がいる部屋の賃料が低い場合、現在の入居者が退去後に賃料が下がる可能性が高いでしょう。
仮に現入居者が全員退去し、すべての部屋の賃料が4.5万円に下がった場合、赤字経営となる恐れがあるため注意が必要です。
注意点③ 直近での申込が多い
申込日や入居日が直近に集中している場合、入居率を高く見せるために一時的に入居させている可能性があるでしょう。満室の物件でも、購入後すぐに退去されてしまうケースがあるため注意が必要です。
オーナー負担の固定費にも注意
レントロールには決まった書式がないため、すべての情報が記載されているわけではありません。
レントロールに記載されている項目の他に、オーナーが負担する固定費がないか確認しておきましょう。
例えば、オーナーが負担する固定費には、以下のものがあります。
・外部駐車場:敷地内の駐車場が足りない場合、近くの土地を借りているケースがあります。利用料や契約状況を確認しておきましょう。
・共用設備の費用:共用設備の水道光熱費など、オーナーが負担する金額がどれくらいか確認しておくと安心です。エレベーターがある場合、電気代が高額になる可能性があります。
・導入した設備の費用:ケーブルテレビ、インターネットなど入居者の満足度を向上させるために行った設備を、オーナーが負担しているケースがあります。
購入後にかかる経費をできる限り明確にしておくと、経営赤字になるリスクを防げるでしょう。
まとめ
レントロールに記載されている内容は難しいものではないため、なんとなく理解するだけで判断してしまうケースがあります。
しかし、買うべきでない物件を見極めるためには、各項目を理解し、購入後にどのようなリスクがあるのかという視点を持つことが大切です。
今回紹介したチェックポイントや注意点をもとに、レントロールを確認してみてくださいね。