2022年09月16日
不動産売却で起こりがちなトラブルを事前に学ぶ!事例と対策を解説
不動産は高額取引になるケースが多いため、売主と買主間、売主と不動産会社でのトラブルが珍しくありません。
法律や取引に関する知識が不足していると、売主が損をしてしまうことがあります。
ここでは、不動産売却時のトラブル事例と対策、万が一トラブルが生じた場合の相談先について解説します。
取引をする前に、確認しておきましょう。
目次
不動産売却時のトラブル事例集と対策
不動産売却時のトラブルには、売却の状況に応じてさまざまなものがあります。
ここでは、不動産売却時に起こりやすいトラブルと対策を事例別に紹介しましょう。
相続・離婚による不動産売却時のトラブル
相続・離婚によって不動産を売却する場合、自分以外の名義人とトラブルが生じるケースがあります。
不動産には所有権という権利があり、1人で100%の権利を所有している状態を単独名義、他の人と割合に応じて共有している状態を共有名義と呼びます。
共有名義の不動産は、他の名義人全員から同意を得られないと売却できません。
勝手に売却手続きを進めると、他の名義人とトラブルが生じる恐れがあるため注意が必要です。
また、相続時は被相続人(亡くなった方)から相続人へ名義変更してから売却する必要があります。(この手続きを相続登記と呼びます)一般的な不動産売却とは手順が異なるため、忘れずに手続きしましょう。
【対策】
不動産を売却する際、権利関係を確認しておくことが大切です。土地や建物の名義は、法務局の登記記録にて確認できます。
住宅ローン残債に関するトラブル
住宅ローンの残債が多い場合、抵当権を外せずに売却できないケースがあります。
抵当権とは、ローン契約者の返済が滞った時に、担保となっている不動産を金融機関が競売にかける権利です。
抵当権は、ローン完済後の手続きで抹消できる仕組みです。(この手続きを抵当権抹消登記と呼びます)
不動産は、抵当権を外してから売却するケースが一般的。
売却代金が想定よりも低い場合、ローンを完済できずに売却できない恐れがあります。
【対策】
不動産売却時は、不動産査定による相場の確認とローン残債額の確認を早い段階でしておきましょう。
隣人に関するトラブル(境界の未確定・不仲など)
不動産売却時によくあるトラブルとして、境界に関するトラブルがあります。
たとえば、隣地所有者のブロック塀や建物の一部が越境していることを理由に、撤去や工事費用をめぐってトラブルが生じるケースがあります。
登記記録や公図など書面として記録が残っていた場合でも、情報が古く、現況と一致していないこともあります。
場合によっては、測量や隣地所有者立会いの下での境界確定が必要です。
また、隣人と売主が不仲の場合も注意が必要です。
その事実を隠して買主へ物件を引き渡した場合、買主と隣人との間でも同じようなトラブルが生じるケースがあります。
事実を隠して不動産を売却した場合、売主が説明義務を怠ったとして訴訟に発展するリスクがあります。
【対策】
境界に関するトラブルは、土地家屋調査士へ依頼する境界確定測量を行うことで防止できます。ただし、測量や境界確定には時間と費用がかかります。実施する場合は早めに計画を立てておきましょう。
また、隣人とトラブルが生じている場合は、事実を隠さずに不動産会社や買主へ伝えることが大切です。
建物の品質に関するトラブル
建物の品質は見極めが難しいため、売買契約後にトラブルが生じるケースが多いです。
「建物は経年劣化によって不具合が生じる」ということは、多くの人が認識しています。
しかし、シロアリ被害や雨漏り、柱の腐食といった重大な不具合を事前に伝えておかないと、後々買主とのトラブルに発展しかねません。
【対策】
・必要に応じてインスペクションを実施する
・契約不適合責任について理解する
インスペクションとは、専門家である第三者機関に依頼して建物の状態を検査してもらうことです。
知識がない人が住宅の質を見極めることは困難です。専門家へ依頼して検査結果を書面にしてもらうと、トラブル防止に役立ちます。
インスペクションの費用相場は、5万~7万円程度。
住宅の質を担保する書類があれば、購入検討者にとっても安心です。早期売却に繋がる可能性もあるでしょう。
契約不適合責任とは、売却する土地や建物の現況と契約内容が一致しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
契約不適合責任は、売主が知っておくべき重要ポイントなので、後ほど詳しく解説します。
媒介契約に関するトラブル
媒介契約とは、不動産会社へ売却の仲介を依頼する際に結ぶ契約です。契約内容を理解していないと、不動産会社との間でトラブルが生じる場合があります。
たとえば、不動産会社を通して売買契約が成立したものの、引渡しまでに契約キャンセルになった場合。売主が不動産会社へ支払う仲介手数料の金額をめぐって、トラブルが生じるケースがあります。
【対策】
・媒介契約を理解する
・契約内容を慎重に確認する
媒介契約には以下3つの種類があります。
【媒介契約の種類】
・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約
一般媒介契約は、1度に複数の不動産会社と契約でき、
専任・専属専任媒介契約は、1度に1社のみと契約できるものです。
専任媒介契約よりも専属専任媒介契約の方が、不動産会社に課せられる義務が重くなっています。
たとえば、売却活動の状況について、専任媒介契約は2週間に1度、専属専任媒介契約は1週間に1度の報告が義務付けられています。
どのタイプが良いかはケースバイケースなので、それぞれの特徴を理解することが大切です。
【媒介契約を選択する際の基準(例)】
・売却したい不動産の条件が良い(立地が良い、築年数が浅いなど)
→一般媒介契約
・営業担当者に手厚くサポートして欲しい
→専任・専属専任媒介契約
・友人や知人に買い手の見当がついている
→一般媒介契約、専任媒介契約
媒介契約を結んだ不動産会社を通して契約が成立すると、仲介手数料を支払う義務が生じます。
売買契約をキャンセルする際の仲介手数料の取り扱いや金額については、契約内容によって異なります。
媒介契約書の内容をしっかりと確認しておきましょう。
売買契約のキャンセルに関するトラブル
不動産取引では、売買契約の締結から決済・引渡しまでに時間がかかります。
それまでに当事者の事情が変わって契約キャンセルとなり、トラブルに発展するケースがあります。
たとえば、買主がローン審査に通過できずに売買契約キャンセルとなる場合です。
一般的に、ローンの本審査は売買契約を結んだ後に行いますが、事前審査で通過していても融資実行に至らないことがあります。
買主が融資審査に通らず売買代金を準備できなければ、契約キャンセルせざるを得ないでしょう。
【対策】
・手付金の金額を高めに設定しておく
・ローン特約について理解する
・不動産会社を通して、買主に関する情報を確認しておく
手付金とは、売買契約時に買主から売主へ預けるお金です。売買契約後に当事者の一方が契約キャンセルする場合のペナルティとなります。
【手付解除のルール】
買主がキャンセルする場合:買主から預かった手付金を売主が没収する
売主がキャンセルする場合:売主が預かった手付金を買主へ返還し、さらに同額を支払う
買主が支払う手付金を多めに設定しておくと、買主都合による安易なキャンセルを防止につながります。
ただし、売買契約時にローン特約を設けている場合は、買主に落ち度がない限り、無条件で契約キャンセルが可能です。
その場合は、手付金は返還しなくてはなりません。
手付金やローン特約など契約内容を理解するとともに、買主の状況(収入や頭金など)についても確認しておくと良いでしょう。
不動産会社からの強引な勧誘に関するトラブル
不動産会社に直接売却する際のトラブルも多いです。
たとえば、知識不足を利用して、強引に手続きを進めるケースがあります。
特に高齢者がターゲットになるケースが多いです。
不動産会社の営業担当者が自宅へ訪問し、長時間滞在するなどして強引に売買契約を締結。
手続き後に不安になった売主が解約を申し出ると、違約金を請求されるといったケースです。
消費者が直接不動産会社へ売却する場合、クーリングオフの制度が適用されません。
売買契約をキャンセルするためには、先ほど解説した手付解除によるペナルティが生じます。
売主が手付解除する場合、買主である不動産会社から預かった手付金の倍額を返還する必要があります。
【対策】
不動産会社が提示する書面には慎重に目を通し、不明点があれば必ず確認しましょう。わからないまま署名・捺印することはNGです。
不動産売却時のトラブルを防ぐには?【売主が知っておくべき知識】
不動産売却時のトラブルを防ぐためのポイントは、情報収集をしっかりと行うことです。
特に契約不適合責任や不動産会社選びについては重要なポイントとなります。
ここでは、不動産売却時に売主が知っておくべき知識について解説します。
契約不適合責任の基礎知識
契約不適合責任とは、売買契約時に引き渡した不動産の現況と契約内容が一致していない場合、売主が買主に対して負う責任のことです。
たとえば、建物がシロアリ被害にあっていることを買主に伝えずに売却した場合。
買主は、売主に対してシロアリ駆除の費用やそれに伴うリフォーム費用、代金の減額などを請求できます。
損害の度合いによっては、損害賠償請求や契約解除されることもあるでしょう。
売買契約における契約不適合責任は、売主が責任を負う範囲や期間を限定できます。
どのような取り決めになっているか、契約時に確認しましょう。
先述の通り、建物の品質を事前に確認するために、インスペクションを行うことも有効的な手段の一つです。
不動産会社選びの重要性とポイント
不動産売却時は、不動産会社のサポートが必要不可欠です。売却活動を先導するのは営業担当者のため、どこへ依頼するかが重要なポイントとなります。
【不動産会社選びのポイント】
・過去の実績(地域や不動産の種類など)
・営業担当者との相性
・不動産取引に関する専門知識
不動産売却は、不動産会社へ査定依頼する流れが一般的です。
不動産査定を複数社へ依頼した場合、高額な査定結果を提示した不動産会社へ依頼したくなりますよね。
しかし、査定価格のみで不動産会社を選ぶと失敗する恐れがあるため注意が必要です。
査定額が高くてもその金額で買う人があらわれる保証はないからです。
媒介契約をとりたいがために査定額を大幅に高く設定する不動産会社もいます。
ただし不動産会社が直接買取を前提としている場合は別です。
不動産会社への依頼には、大きく分けて仲介と買取があります。
【仲介と買取の違い】
仲介:不動産会社が買主を探してくれる方法
買取:不動産会社が直接買い取ってくれる方法
仲介は売却活動をしながら買い手を探しますが、買取は不動産会社が直接買い取るため、査定額が高くても問題ありません。
不動産査定を依頼する場合、仲介と買取のどちらに該当しているのかも確認しておきましょう。
【不動産売却のトラブル発生時】相談先はどこ?
万が一のトラブルに備えて、相談先を確認しておくことも大切です。
基本的には仲介を依頼している不動産会社へ相談しますが、相談できる状況にない場合は以下へ連絡してみてください。
【トラブル発生時の相談先】
・消費者ホットライン:188
・宅建協会の不動産無料相談:各地域の相談窓口
まとめ
不動産売却時は、基本的に営業担当者が先導してくれます。ただし、トラブルを防ぐために、売主として法律や取引に関する知識を深めておくことも大切です。
ここで紹介したトラブル事例や対策、不動産会社選びのポイントなどを参考にしてみてください。