2022年05月10日
家賃収入の税金はいくら?計算方法や確定申告までシンプル解説【初心者向け】
賃貸経営で得た家賃収入には税金がかかり、確定申告が必要です。
「賃貸経営に興味があるけど、どんな税金がかかるのかわからなくて不安…」
この記事は、このような悩みを抱えたあなたに向けて書いています。
ここでは、
- 家賃収入にはどんな税金がかかるのか
- 不動産所得にかかる所得税、住民税の計算方法
- 不動産所得が事業としての所得となるケース
- 不動産所得の確定申告の方法
などについて解説します。
確定申告をやったことない人でも、税金の知識をわかりやすく解説していますので、
賃貸経営を始める前に、税金についてしっかり学んでおきましょう。
目次
家賃収入にかかる税金は主に所得税と住民税
家賃収入などの不動産所得にかかる基本的な税金は、所得税と住民税です。
所得税と住民税は、不動産所得の金額に応じて税額が変わります。
不動産所得にかかる税金を理解するには、不動産所得の仕組みを理解する必要があります。
勘違いされることが多いポイントは、家賃収入の100%=賃貸経営者の不動産所得ではない点です。
まずは不動産所得の基本的な知識を解説していきます。
不動産所得は賃貸経営で得た収入ー必要経費
不動産所得とは、賃貸経営で得た利益のことで、以下の計算式で求めます。
賃貸経営で得たすべての収入から、必要な経費を差し引いた金額が、不動産所得です。
不動産所得についての理解を深めるために、収入となるもの、必要経費となるものを解説していきます。
賃貸経営者の収入となるもの
賃貸経営者の収入となるものは、家賃収入の他に以下のものが挙げられます。
- 礼金
- 更新料
- 管理費
- 駐車場代
- その他 敷地内に設置した自動販売機による収入など
入居者から受け取るお金として、他にも「敷金」がありますが、敷金は将来返還する性質を持つため、収入には含まれません。
ただし、入居者の債務不履行などで返還しなくなった場合は、収入として計上します。
賃貸経営者の必要経費となるもの
賃貸経営者の必要経費となるものは、以下の通りです。
- 固定資産税など税金関係
- 損害保険料
- 修繕費
- 借入金利子
- 管理費
- 交通費
- 減価償却
- 消耗品など
税金関係や損害保険料など、物件を維持するためにかかるお金は必要経費です。
また、賃貸経営に関連したセミナーや、物件を見に行く際の交通費も必要経費となります。
建物の購入代金は、一度に経費を計上するのではなく、毎年一定額を税法で決められた期間で計上していきます。
この仕組みを減価償却といいますが、減価償却費を上手く活用すると、所得税・住民税の節税にも繋がるでしょう。
減価償却費の計算方法について詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
賃貸経営者の必要経費は、経費として申告できるのかの線引きが難しいので、迷ったときは税理士さんへ相談しましょう。
各費用については、こちらの記事でも解説しているので参考にしてください。
不動産所得にかかる税金:所得税
所得税は個人で得た収入に対して課税される税金で、所得の性質によって10区分に分類されています。
所得税の分類:利子所得、配当所得、給与所得、不動産所得、事業所得、譲渡所得など
不動産所得は所得税のうちの1つで、家賃や権利金など、不動産を貸し付けることで得る所得です。
所得税の課税対象となるのは、前章で解説した収入から必要経費を差し引いた金額です。
不動産所得=賃貸経営で得た収入ー必要経費
また、不動産所得は、賃貸経営の規模が一定以上になると、事業で得た所得として確定申告できます。
この場合は税制上のメリットもあるので、後ほど詳しく解説します。
(第7章:事業で得た所得として確定申告できるケース)
不動産所得は総合課税で他の所得と合算ができる
所得税は、税額の計算方法によって「総合課税」と「分離課税」に分かれ、不動産所得は総合課税です(下記参照)。
総合課税と分離課税の仕組みを理解しておくと、賃貸経営で赤字が出た時にも役立つので、しっかりと理解しておきましょう。
例:不動産所得、給与所得、事業所得など
例:土地や建物を売却したときの譲渡所得、退職所得など
例えば、会社員としての給与所得500万円、賃貸経営の不動産所得200万円、不動産売却時の譲渡所得100万円の所得があった場合
給与所得500万円と不動産所得200万円は合算して税額を計算し、譲渡所得100万円は分けて税額を計算します。
不動産所得が赤字になったとき給与所得で控除できる
損益通算とは、総合課税の他の所得が赤字になった場合、他の所得から赤字分を控除することです。
例えば、会社員として給与所得500万円ある賃貸経営者が、不動産所得100万円の赤字だった場合。
給与所得500万円ー不動産所得100万円=所得400万円
上記のように給与所得から不動産所得を差し引いて、所得を少なくできます。
所得を少なくすることで、確定申告で税金の還付を受けられる仕組みです。
不動産所得にかかる所得税の税率と計算方法
総合課税に分類される所得は、所得が多いほど税率が高くなる「累進税率」が採用されています。所得税の税率は以下の通り、5%~45%です。
所得税の速算表(平成27年分以降)
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~194.9万円 | 5% | 0円 |
195万円~329.9万円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694.9万円 | 20% | 42万7,500万円 |
695万円~899.9万円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799.9万円 | 33% | 153万6,000円 |
1800万円~3,999.9万円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
引用元:国税庁 No.2260 所得税の税率
所得税の計算方法は、課税所得金額×税率ー控除額となっています。
例えば、総合課税の課税所得金額が350万円だった場合の所得税は、以下の通りです。
所得税 272,500円=課税所得金額350万円×税率20%ー控除額427,500円
不動産所得にかかる税金:住民税
不動産所得にかかる住民税には、所得割と均等割があります。
所得割
所得割とは、所得に関係なく一律で課税される税金です。
所得割の税率は、基本的に以下の通り10%ですが、地域によって異なる可能性があるので、各自治体へ確認しましょう。
また、所得割の所得額とは、以下を控除した後の金額になります。
- 生命保険料控除
- 社会保険料控除
- 医療費控除
- 雑損控除
- 地震保険控除
- 人的控除
- 小規模企業共済等掛金
均等割
均等割とは、一定以上の所得がある場合に定額で課税される税金です。
例えば、東京都は5,000円(個人都民税1,500円、個人区市町村民税3,500円)となっています。
引用元:東京都主税局 個人住民税
不動産所得にかかるその他の税金(個人事業税・消費税)
家賃収入などの不動産所得にかかる税金には、他にも個人事業税、消費税があります。
所得金額や賃貸の目的などによって納税義務が生じるので、併せて確認しておきましょう。
個人事業税
収入から必要経費を引いた金額(課税金額)が290万円を超えると、不動産がある都道府県に対して個人事業税の納税義務が生じます。
個人事業税は業種によって税率が変わり、不動産貸付業は税率5%です。
消費税
居住用として賃貸する場合の賃料は消費税が非課税です。
しかし、貸店舗や倉庫、駐車場など非居住用として賃貸する場合は、消費税の課税対象となります。
賃貸経営の課税売上高※が1,000万円以下の場合は、賃貸経営者に納税義務がありませんが、1,000万円を超えると納税義務が発生します。
※課税売上高:経費を差し引く前の収入
納税義務が生じた場合、入居者から受け取った消費税は確定申告で納税しましょう。
青色申告で最大65万円の控除がうけられる【事業規模条件あり】
賃貸経営が事業として認められるかどうかで、所得金額の取り扱いが変わります。
以下の通り、一定規模以上の賃貸経営は、事業として行われていると判断されます。
- 独立した室数がおおむね10室以上であること
- 独立した家屋がおおむね5棟以上であること
参考元:国税庁 No.1373 事業としての不動産貸付けとその区分
賃貸経営が事業として認められると、確定申告する際、青色申告または白色申告が選択可能です。青色申告で確定申告すると、最大65万円の控除が受けられます。
控除額が大きい場合、税金の還付を受けられる可能性があるため、将来的に事業規模の拡大を目指している人は覚えておきましょう。
また、アパート経営で法人化を目指している人は、こちらの記事も参考にしてください。
不動産所得の確定申告期間や方法は?
確定申告は、毎年申告期間が決まっています。申告を怠った場合、無申告加算税が生じる可能性もあるので、忘れずに行いましょう。
- 不動産所得の対象期間:1月1日~12月31日
- 確定申告の申告期間:翌年の2月16日~3月15日
確定申告は、年度によって申告期間が異なる可能性があります。
例えば、令和2年分の確定申告期限は、新型コロナウイルスの影響で令和3年4月15日まで延長されました。
具体的な申告期間は、国税庁や各地域の税務署の公式サイトでご確認ください。
白色申告・青色申告
不動産所得は、事業規模によって白色申告または青色申告で確定申告します。
白色申告は比較的シンプルなため、確定申告をしたことがない人にもわかりやすいでしょう。
青色申告は、複式簿記で帳簿付けを行うため、白色申告よりも複雑です。
ただし、所得によって最大65万円の控除を受けられるので、節税に繋がります。
前章で解説した通り、青色申告で確定申告するには、賃貸経営が一定規模以上であることが条件です。
また、事前に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。
青色申告の承認手続きはとくに難しくありません。
詳しくは下記の国税庁公式サイトをご確認ください。
まとめ
賃貸経営で得た家賃収入には、所得税や住民税がかかるため、確定申告が必要です。また、賃貸経営の規模が大きくなると、個人事業税や消費税の納税義務も生じます。
会社員の給料とは異なり、賃貸経営では後から納税する仕組みです。納税時にお金を用意できないなどのトラブルを避けるために、賃貸経営を始める前に税金の知識を身につけておきましょう。
また、税金の知識が豊富なほど上手く節税できるため、効率よく賃貸経営をしていけるでしょう。