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2022年09月02日

不動産投資のデットクロスとは?発生の原因から回避・対処法まで解説

不動産投資を検討している人は、「デットクロス」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

デットクロスとは「帳簿上では利益が出ているのに、手持ちの資金繰りが悪化している状態」のことをいいます。

この状態が長引くことで経営が悪化し、ローンの返済が滞る場合があります。

安定した賃貸経営を続けていくためには、デットクロスについて理解を深めることが大切です。

今回は、デットクロスの基本的な知識から回避する方法、万が一、デットクロスが発生した時の対処法まで解説します。

不動産投資のデットクロスとは?

デットクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態のことです。資金繰りが悪化し、黒字倒産になる可能性があります。

まず、ローンの元金返済額とは、金融機関へ毎月返済する金額です。

実際に発生するお金ですが、経費として計上できません。(ローンの利息分は経費計上可能です。)

減価償却費とは、建物の価値が目減りする分を、一定期間に分けて経費計上できる費用です。

実際に費用は発生しませんが、会計上で費用として処理します。

デットクロスが起こる前は、減価償却費を計上する影響もあり、ローンの返済額よりも計上できる経費が多い状態です。

デットクロスの時期を超えると、計上できる経費よりも出ていくお金が大きくなるため、キャッシュフローが厳しくなります。

以下の記事では、減価償却費について解説しているので、興味がある人はご覧ください。

 

デットクロスの具体例

デットクロスによってキャッシュフローが厳しくなる仕組みをイメージしやすいように、具体例で解説します。

以下の例では、表の一番下にあるCF(キャッシュフロー)がマイナスになる6年目以降が、デットクロスが起きた時期です。

条件
  • 物件価格:2,000万円(土地1,100万円、建物900万円)
  • 借入額:1,800万円・頭金200万円
  • 借入期間:10年
  • 毎年の返済額:180万円(※金利は考慮していません。)
  • 利回り:10%(年間売上:200万円)(※物件価格=投資金額とし、経費は考慮していません。)
  • 年間の減価償却費:180万円×償却期間5年
  • 税金(所得税・住民税):1年目~5年目15%、6年目・7年目20%

(単位:万円)

  1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目
A売上 200 200 200 200 200 200 200
B減価償却費 180 180 180 180 180    

C納税前利益

(AーB)

20 20 20 20 20 200 200

D納税額

(C×税率)

3 3 3 3 3 40 40

E納税後利益

(CーD)

17 17 17 17 17 160 160
Fローン返済額 180 180 180 180 180 180 180

CF

(E+BーF)

17 17 17 17 17 ー20 ー20

※8年目以降は省略しています。※CF=キャッシュフローです。

減価償却費は、建物の構造や築年数によって経費計上できる期間が決まっています。

上記の例では、5年間に分けて180万円ずつ計上していたB列の減価償却費を、6年目以降は経費として計上できなくなり、A列の売上200万円がそのまま課税対象になっています。

課税対象の金額が増えた影響で、税率が15%から20%に上がり、D列の納税額が3万円から40万円に増え、6年目以降の経営が悪化したという仕組みです。

5年目までは減価償却費(B列)=ローン返済額(F列)となり、納税・ローン返済後もCFとして手元に17万円残っています。

しかし、6年目以降は減価償却費<ローン返済額となっており、CFがマイナス20万円です。これがデットクロスが発生している状態です。

 

不動産投資でデットクロスが発生する原因

不動産投資でデットクロスが発生する原因は、計上できる経費の減少によるものや、家賃収入の下落によるものなどがあります。

ローンの返済が進んでいる

ローンの利息は、経費計上できる費用の一つです。

利息は元金をもとに計算するため、元金が減ることで利息も減り、デットクロス発生の原因になります。

ローンの返済方法は、元利均等返済と元金均等返済の2つです。利息が減っていく仕組みをイメージしやすいように、2つの返済方法についてもう少し詳しく解説しましょう。

 

① 元利均等返済・元金均等返済

元利均等返済と元金均等返済のシミュレーションを比較した表を以下にまとめているので、文章と照らし合わせながらご覧ください。

元利均等返済とは毎月の支払額が返済期間中は一定の返済方法」です。

返済開始当初の毎月の負担は元金均等返済よりも少なくなりますが、元金の減りが遅いため総返済額が多くなります。

元金均等返済とは「返済期間中、元金の返済額が毎月一定の返済方法」です。

返済開始当初の毎月の返済負担は、元利均等返済よりも大きくなりますが、元金の減りが早いため総返済額が少なくなります。

また、元金均等返済の毎月の返済額は、元金+元金の残額に対する利息となるため、返済が進むと支払う利息が減って、毎月の負担も少なくなります。

借入条件
借入金額:1,000万円
金利:1.5%
借入期間:20年

元利均等返済・元金均等返済の利息総額と総返済額

  利息総額 総返済額
元利均等返済 約158万円 約1,158万円
元金均等返済 約150万円 約1,150万円

※1万円未満切り捨て

期間ごとの返済額・元金・利息の推移

    初回 6年目 16年目
元利均等返済 月額 約4.8万円 約4.8万円 約4.8万円
(内:元金) 約3.5万円 約3.8万円 約4.4万円
(内:利息) 約1.2万円 約9,000円 約3,000円
元金均等返済 月額 約5.4万円 約5.1万円 約4.4万円
(内:元金) 約4.1万円 約4.1万円 約4.1万円
(内:利息) 約1.2万円 約9,000円 約3,000円

※1,000円未満切り捨てのため、月額と内訳(元金・利息)の合計に誤差があります。

減価償却が進み、計上できる経費が減る

前章の「デットクロスの具体例」でも解説した通り、経費として計上できる減価償却費が減ることは、デットクロス発生の原因の一つです。

減価償却費は実際に発生していなくても、経費として計上できる費用のため、節税効果が大きくなっています。

減価償却期間が終了し、経費計上できなくなるタイミングは、キャッシュフロー圧迫の原因の一つです。

また、減価償却できる期間は、建物の構造や築年数によって異なります。

アパートに多い木造の耐用年数は22年、マンションに多い鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年となっています。耐用年数が長いほど、減価償却期間が長くなる仕組みです。

 

築年数の経過による家賃収入の下落

家賃収入が減ることも、デットクロスが起こりやすくなる原因の一つす。

築年数が経過することで物件の魅力が下がり、入居率の低下や家賃が下落する場合があります。

計画的に修繕を行っていても、周辺の新築物件と比べると見劣りしてしまうケースもあるでしょう。

そのため、家賃を下げないと入居者が集まらないという現象が起こります。

 

不動産投資のデットクロスを回避する方法

デットクロスを回避する方法にはさまざまなものがあるため、自分に合った方法を選択しましょう。

 

頭金を多く投入する

ローンを借り入れる際、頭金を多く投入していれば借入額が少なくなり、資金繰りに余裕ができます。

借入額によっては借入期間も短縮できるため、デットクロスになるリスクが下がります。

購入前に収支のシミュレーションを行い、どの程度、頭金を投入すれば資金繰りに余裕ができるか確認しておくことが大切です。

ただし、投入する頭金が多いほどレバレッジ効果が低くなるため、不動産会社に相談しながら、頭金と借入額のバランスを検討しましょう。

以下の記事では、ローン借入時の頭金について解説しているので、興味がある人はご覧ください。

 

減価償却期間が長い物件を購入する

減価償却期間よりもローンの借入期間が長くなると、減価償却期間終了後にデットクロスが発生します。減価償却期間が長い物件を購入することで、デットクロスが発生するリスクを抑えられるでしょう。

減価償却期間が長い物件の具体例は、新築・築浅の物件や、構造によって耐用年数が長くなりやすいマンションなどがあります。不動産投資の目的や予算に合わせて物件を選びましょう。

 

元金均等返済でローンを返済する

元利均等返済は、ローンの返済が進むにつれて、毎月の返済額に占める利息の割合が減っていきます。そのため、経費として計上できる費用が減り、デットクロスが発生しやすくなるでしょう。

元金均等返済は、初回から完済まで元金の返済額が一定のため、比較的デットクロスが発生しにくくなります。

ただし、どちらの返済方法でも返済が進むにつれて利息が減っていくので、毎月の返済額や借入期間などの借り入れ条件と、減価償却費や減価償却期間とのバランスが大切です。

不動産会社と相談しながら、収支のシミュレーションをしっかり行いましょう。

 

収益性の高い物件を購入する

デットクロスの問題点は、キャッシュフローがマイナスになり、手元の資金が不足して経営が悪化することです。高利回りなど収益性の高い物件を購入すれば、手元に資金を残すことができるでしょう。

ただし、表面利回りが高い物件でも、購入後の維持費が多くかかったり、入居づけが厳しかったり問題があるケースもあります。物件を購入する際は、老朽化・空室・家賃下落などのリスクを考慮した上で収益性を見極めることが大切です。

以下の記事では、利回りや物件情報の取得方法について解説しているので、興味がある人はご覧ください。

 

デットクロス発生時の対処法

節税目的で中古物件を購入する場合、デットクロスが発生しやすくなります。理由は、不動産投資で節税をする場合、築古物件を購入して初期に減価償却費を大きく取ることで、利益を圧縮するためです。

特に、木造の中古アパートは償却期間が短く、短期間で大きく減価償却できるため、デットクロスになりやすい状態です。

このようなケースでは、デットクロスを回避するよりも、デットクロスが発生した時にどのように対処するかを考えておくことが重要になります。

 

不動産を売却する

デットクロスが発生した場合、その後のキャッシュフローは悪化していきます。そのため、不動産を所有し続けるメリットがありません。デットクロスの前後で売却を検討することも選択肢の一つでしょう。

ちなみに、不動産を売却する際に得た利益を譲渡所得といいますが、譲渡所得にかかる譲渡所得税は、所有期間が5年超えか5年以下で税率が大きく異なります。

譲渡所得の税率

所有期間 所得税 住民税
5年超え 15% 5%
5年以下 30% 9%

 

所有期間が5年超えるかどうかは、購入時期ではなく、売却した年の1月1日を基準に考えます。購入した時から5年を超えていても、1月1日基準で超えていないケースもあるため、注意が必要です。

譲渡所得税の詳細は、国税庁の公式サイトをご確認ください。

 

減価償却期間が長い不動産を追加購入する

デットクロスが生じるタイミングで、新たに減価償却期間が長い不動産を追加購入することで、経費計上できる減価償却費を増やし、デットクロスを回避できる場合があります。

減価償却期間が終わるタイミングで物件の売却と購入を繰り返すことで、節税効果を得ながらデットクロスを回避できる仕組みです。

 

まとめ

デットクロスは、節税目的で中古アパートに投資する場合や、借入額が多い場合、不動産を長期間所有する場合などに起こりやすくなります。

減価償却期間が長い物件を購入する、収益性の高い物件を購入するなど、工夫をすることで回避できる場合があるでしょう。

ただし、どうしても回避できないケースもあるので、早めに不動産会社に相談して適切に対処することをおすすめします。

この記事を書いた人

代表 山本

大吉不動産株式会社 代表取締役 2005年より不動産業に携わり、自らも区分のワンルームマンション投資や一棟アパート投資を実践している。 多くの不動産投資成功者を見る一方、初心者の失敗相談も多く受ける中、失敗する方を減らすため情報を提供しつつ、これから不動産投資を始める初心者の方を中心に不動産投資のいろはをお伝えしております。

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