2023年03月09日
新耐震基準とは?地震に強い物件を選ぶメリット・旧耐震基準のリスク
耐震基準は、不動産を購入する際の重要ポイントの一つです。
法改正の影響で新耐震基準と旧耐震基準に分かれているため、違いを確認しておきましょう。
ここでは、新耐震基準と旧耐震基準の違いや確認方法、耐震基準に注目して物件を選定するメリット・注意点を解説します。
目次
新耐震基準とは?
新耐震基準とは、1981年(昭和56年)に改正された建築基準法の基準を満たしている耐震基準のことです。
耐震基準とは、建物が地震の揺れに耐えられるように設けられた規定です。
耐震基準の他にも、防火や設備など安全性を保つための基準が法律で定められています。
1981年の法改正以前の基準を「旧耐震基準」と呼びます。
耐震基準は大地震の度に改正されている
旧耐震基準から新耐震基準に改正されたきっかけは、1978年に発生した宮城県沖地震です。
人口50万人を超える都市が初めて経験した大規模な地震だったこともあり、深刻な被害をもたらしました。
新耐震基準は1981年以降の耐震基準を指しますが、実はその後も大きな地震の度に改正されています。
例えば1995年に発生した阪神・淡路大震災では、最大震度7という大きな揺れが大型都市を襲いました。
人や企業が密集する都市での大地震であったため、建物の倒壊などにより多くの方が亡くなりました。
そのため、この地震の後にも耐震基準が改正されています。
阪神・淡路大震災後に改正された、最新(2023年時点)の耐震基準を2000年基準といいます。
新耐震基準・旧耐震基準の違い
新耐震基準は、旧耐震基準よりも地震に強い構造です。
改正では耐力壁や基盤の規定に関する見直しが行われ、大規模な地震でも倒壊しないように基準が設けられました。
例
・木造の耐力壁のバランスを見直す
・鉄筋コンクリートの基盤強化
【旧耐震基準が目指す耐震性】
・震度5強程度の地震でも、建物がほとんど損傷しない
【新耐震基準が目指す耐震性】
・震度5強程度の地震でも、建物がほとんど損傷しない
・震度6強または7といった強い地震でも、建物が倒壊・崩壊しない
東日本大震災では新耐震基準の建物の被害が少なく、大きな被害を受けた建物の多くは旧耐震基準だったといわれています。
新耐震基準と旧耐震基準の確認方法
新耐震基準・旧耐震基準の確認方法は、建築確認日が1981年6月1日以降であるかどうかです。
【建築確認とは?】
建築確認とは、建設する建物が現行の建築基準法に適合しているかどうかについて行政等によるチェックを受けることです。この確認は、建築基準法によって義務化されています(建築基準法 第6条)。
【注意点】完工日ではなく「建築確認日」が1981年6月1日以降か否かをチェック
建物の設計から完工までは、以下の流れで行われます。
上記のように、建物が完成するまでの過程で各種検査が行われ、検査が完了すると確認済証、検査済証といった書類が発行される仕組みです。
耐震性の要である構造の確認は、工事着工前の建築確認で行います。
設計から完工まではタイムラグがあるため、完工日や物件広告の築年数が1981年6月以降でも、建築確認日がそれ以前であれば旧耐震基準の可能性があります。
1981年前後に建てられた建物の耐震基準を確認する際は、建築確認日をご確認ください。
参考元:e-GOV法令検索 建築基準法
新耐震基準の建物を購入するメリット
新耐震基準の建物を購入する場合、税制上や融資審査などで有利です。ここでは、4つのメリットを解説します。
税制優遇を受けられる
建物の購入にかかる登録免許税や不動産取得税の特例、住宅ローン控除といった各種制度を利用する条件には「一定の耐震基準を満たしていること」という項目があります。
不動産の購入にかかる税金の多くは「物件価格×〇%」と計算するため、負担が大きくなりがちです。
経費を節約したい場合は新耐震基準の建物を検討するとよいでしょう。
ローン審査で評価されやすい
融資を受ける際、担保となる不動産に対して融資額が適切であるかどうかがポイントの一つになります。
ローン契約者の返済が滞った場合、金融機関が担保となっている不動産を競売にかけて債権回収しなければならないためです。
旧耐震基準や老朽化が進んでいる建物の場合は評価が厳しく、融資を利用できないケースがあります。
例えば、マイホーム購入時に利用できる「フラット35」には「新耐震基準に適合していること」という条件が設けられています。
新耐震基準であればそのような弊害がなく、ローン審査で有利です。
地震保険料が安くなる
火災保険とセットで加入する地震保険には、一定の耐震基準を満たした建物に割引料金が適用されます。
例:新耐震基準であれば10%の割引
地震大国である日本において、地震保険への加入は欠かせません。
損害保険は定期的にかかる経費であるため、経費を節約したい方は新耐震基準を選択するとよいでしょう。
売却時にも有利
新耐震基準の建物を購入する際に税制・ローン審査での優遇、地震保険料の割引といったメリットがあることは売却時にも影響します。
売却相手である買主も同様のメリットを享受できるため、旧耐震基準よりも新耐震基準の方が買い手が見つかりやすいといえます。
旧耐震基準の購入はNG?購入時の注意点
旧耐震基準の建物の全てがNGではありません。
とはいえ、新耐震基準のようなメリットがなく、費用面や災害時におけるリスクを伴います。
【旧耐震基準の注意点】
・価格は割安だが、メンテナンス費用がかかる傾向にある
・災害時の被害を拡大させるリスクがある
【不動産投資入門】利回りの計算方法をわかりやすく説明します。
阪神・淡路大震災で亡くなった方の約9割は、家屋や家具等の倒壊による圧迫死だといわれています。
地震発生後に逃げる際、倒壊物の下敷きになってしまったためです。
また、倒壊した建物から火の手が広がるなど、地震に弱い建物は被害を拡大させるリスクがあります。
旧耐震基準の建物を購入する際は、それらのリスクも考慮して検討しましょう。
政府は耐震化を進めている
地震による被害を抑えるために、政府は耐震化を進めています。
耐震診断や改修工事を行うと一定の補助金が支給される、税制優遇を受けられるなど、各種制度が設けられています。
検討している物件が旧耐震基準の場合、制度を活用するのも手です。
また、耐震性を高めれば地震への対策につながるものの、それだけでは限界があります。
そこで、昨今は「制震」や「免震」が注目されています。
耐震とは建物の構造自体を強くして揺れに備えることですが、制震や免震は地震の揺れを抑える工夫を施すことです。
特に、マンションのように大きな建築物の購入を検討している方は、耐震性だけでなく制震・免震への対策が施されているかを確認してみるとよいでしょう。