2023年04月11日
地震に弱い=売却は難しい?旧耐震基準の不動産を高く売るコツを解説
建物の性能には「耐震性」という基準があり、建てられた時期によって地震の揺れに対する強さが異なります。
築年数の古い建物は耐震性が低く、売りにくい傾向があり、売却を諦めている方もいるのではないでしょうか。
実は上記不動産でも、売却できる可能はあります。
ただし、一般的な不動産売却よりも難易度が高いため、注意点や高く売るコツを確認しておきましょう。
目次
地震に弱い不動産とは?旧耐震基準と新耐震基準の違い
不動産の耐震基準には、旧耐震基準と新耐震基準があります。
1981(昭和56)年5月31日までの建築確認に適用されていたのが旧耐震基準、
翌日以降から、新耐震基準が適用されています。
旧耐震基準は、震度5強程度で、
新耐震基準は、それよりも強い震度6強~7程度の揺れでも壊れないような基準になっています。
この記事での「地震に弱い不動産」とは、旧耐震基準で建てられた建物を指します。
地震大国である日本において、建物の耐震性は命にかかわる重要な性能です。
大地震が起こる度に法律が改正されているため、建築時期によって建物の耐震基準に差が生じています。
耐震基準の違いが不動産の価値や売りやすさに影響し、「旧耐震基準の不動産は売却が難しい」といわれています。
旧耐震基準と新耐震基準については以下の記事で詳しく解説しています。
地震に弱い不動産の売却が難しい理由
旧耐震基準の不動産は売却可能ですが、新耐震基準の不動産売却よりも難易度が高い傾向にあります。
売却が難しい理由は、さまざまな理由で買主から敬遠されるためです。
ここでは、地震に弱い不動産の買い手が見つかりにくい理由を解説します。
ローン審査に通りにくい
金融機関による融資審査では、ローンの担保となる不動産の価値を確認します。
耐震性は不動産の価値を左右する要素の一つであるため、耐震性が低い不動産の評価は厳しくなる傾向です。
一般的に、不動産はローンを組んで購入します。
審査に通りにくい、または、融資の条件が悪くなるリスクのある不動産は、購入者の検討対象から外されることがあります。
地震保険料が割高になる
地震保険料は、保険金が支払われるリスクの高い不動産ほど割高になる仕組みです。
新耐震基準よりも旧耐震基準の方が、地震による損壊リスクが高いため保険料が高くなります。
買い手は「固定費を抑えたい」と考えるため、保険料が割安な新耐震基準を検討する方は多いでしょう。
住宅ローン控除を利用できない
主にマイホームの売却時になりますが、地震に弱い不動産は買主が税制面で不利なため敬遠されがちです。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入した方が利用できる税額控除です。
税額控除を利用できると、所得税や住民税の負担を抑えられます。
住宅ローン控除には多くの適用条件がありますが、その中の一つに以下の項目が盛り込まれています。
・1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された建物である
・(上記に該当しない場合)新耐震基準を満たしていることを証明できる
贈与の特例を受けられない
マイホームには、税金の負担を軽減させるための複数の特例が設けられています。
「住宅取得等資金の贈与の特例」も、その中の一つです。
この特例を利用できれば、父母や祖父母からマイホーム購入のための資金を贈与された場合、一定金額までが非課税になります。
一般的な住宅の非課税限度額は500万円です。
通常、年間で110万円を超える贈与を受けた方には贈与税がかかります。
例えば、18歳以上の子が父から2,500万円の贈与を受けた場合、課税される贈与税額は810.5万円です。
810.5万円=(2,500万円-基礎控除額110万円)×税率45%-控除額265万円
贈与税は、税率が高く負担が大きいため、贈与の特例が適用されることは買い手側の大きなメリットです。
しかし、特例の条件には「1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された建物であること(または新耐震基準を満たしている旨を証明できること)」が盛り込まれているため、旧耐震基準の不動産は対象から外れます。
参考元:国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与受けた場合の非課税
地震に弱い不動産を売却する方法
一般的な不動産売却時は、仲介会社へ依頼して買主を探します。
しかし、地震に弱い不動産の場合、工夫をしないと売却が長引いてしまう可能性があるため注意が必要です。
ここでは、地震に弱い不動産の売却方法について解説します。
リフォームで価値を高める
日本では新築物件が人気ですが、昨今はリフォームされた中古物件を購入する方も一定数います。
建物が古い場合、リフォームをしてから売りに出すのも手です。
国土交通省の「令和3年度 住宅市場動向調査」によると、売却の1年以内に売主がリフォームした取引の割合は約4~5割でした。
リフォームをして価値を高めてから売りに出すことは、物件によっては早期売却・高値での売却に効果的です。選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
解体後に土地として売る
建物の老朽化が進んでいる場合、「解体後に土地として売る」という選択肢もあります。
土地として売却するメリットは、購入検討者のターゲット層が広がることです。
建物が建っている状態では用途が限られますが、土地の場合、駐車場や貸倉庫など多数の用途があります。
買取業者へ相談する
不動産を売却する方法には、「仲介」と「買取」という2つの選択肢があります。
仲介:不動産会社に買主を探してもらう方法
買取:不動産会社に直接買い取ってもらう方法
一般的な売却方法は、仲介です。
不動産会社に取引の仲介を依頼し、広告活動などによって買主を探します。
買取の場合、仲介では買い手が見つかりにくい不動産でも、短期で売却・現金化できる点がメリットです。
ただし、仲介での売却よりも売却価格が下がる可能性があります。
買取業者は、売主から買い取った不動産に付加価値をつけて、転売益を得る仕組みです。
売主から高く買い取ってしまうと不動産会社が利益を得られないため、買取価格が相場よりも低くなります。
旧耐震基準の不動産を高く売るコツ
地震に弱い不動産の売却は難しく、結果的に相場よりも売り値が下がる傾向にあります。
「少しでも高く売るにはどうすればよいか」お悩みの方に向けて、旧耐震基準の不動産を高く売るコツを解説します。
不動産会社選びが重要
不動産の売却価格は「個別性」に左右されます。
個別性とは、一つ一つの不動産が持つ特徴や売主・買主が抱えている事情のことです。
例えば、同じ地域にある建物でも、築年数や日当たり、劣化具合などさまざまな観点から価値が異なります。
また、同じ不動産でも、売主が「少しでも早く売却したい」と考えている場合と「いつか売れれば良いかな…」と考えている場合とでは、売り急いでいる方が売却価格が低くなる傾向にあります。
つまり、不動産には定価が存在しません。その時の事情によって、価格が変動する仕組みです。
不動産を高く売るには、地域の事情を深く理解しており、売却の取引実績が豊富な不動産会社へ相談することが大切です。
特に、旧耐震基準の不動産売却は、売却の難易度が高くなります。
「リフォームするか解体するか」「仲介か買取か」など、売却方法を適切に判断してくれる不動産会社を選定することがポイントです。
リフォームや解体は自己判断しない
リフォームや解体をすれば高く売れるケースもありますが、高額な費用がかかります。
費用をかけたからといって売却価格に上乗せできるとは限らないため、売主が損をしてしまうリスクがあります。
リフォームや解体は、不動産会社へ相談して検討しましょう。
【空き家を放置するリスク】売却の検討はお早めに!
売却を検討している不動産が空き家の場合、注意が必要です。
空き家の増加は、日本の社会問題化しています。
放置された空き家が増加すると治安が悪化する、景観が損なわれるなど、近隣住民へ迷惑がかかるためです。
政府は、空き家問題を解消するために危険性の高い空き家に対して、固定資産税の課税を強化するなど、対策を取っています。
空き家を放置すると、金銭的な負担が増える可能性がある点に注意が必要です。
また、空き家の状態で放置すると、建物の劣化が早まります。
「もっと早く売却していれば高く売れたのに…」と後悔しないためにも、売却の手続きにかんする検討は早めに行うことをおすすめします。